150BPM

ものすごいサブカルですが、あまり気付かれません。

「破滅のマヤコフスキー」という”読書経験”の話。

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 Amazonプライムに加入してることに何か月も気付かなかったんだけど、アプリをインストールして見始めたら、めちゃくちゃ最高ッ!

という訳で、マイブームにあやかって「ロマノフ家の末裔 ~それぞれの人生~ シーズン1」を見た。

アマプラオリジナルってわけで1話が1時間半あるんだけど、軽く流しながら見るとちょーど良い。 

1話の舞台がパリだから、ほとんどフランス語で「キッツ…フラ語の呪い…」ってなったけど、そこを超えれば最高。

ロマノフ王朝の末裔の話…!メシウマ!」って思ってみてたけど「おや?」って思うところがあって調べたら「ロマノフ王朝末裔だと思ってる人たちのお話し」ってことだった。南無。

大好きなノア・ワイリーも出てる(多分これは幼少期のERでの刷り込み)し、しかもタキシードだし、それを着崩してるのも最高。

「マッドメン」のスタッフが作ってることもあって、少しシニカルだけど映像が美しい。

 オープニングもセンセーショナルで、とにかく音楽が最高。

残念なのが、シーズン1で終了ということ。

そうだよね!需要ないよね!おつかれさまでした!

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(最近いちごをよくスーパーで見かけるので、毎日食べてたらお肌が整ってきた気がする)

「破滅のマヤコフスキー」が届いた。分厚い。デカい。重い。文字が小さい。

帯の「でもわたしのは出口がないのだ」っていうのが、絶望感漂ってくる。

最後の方でこの一文は遺書からの引用ってことがわかって「おうふ」ってなった。

電車でこれ読んでると「アァァッ!わたし本読んでるぅッ!」っていう気持ちになるサイズ。

 

内容は著者がモスクワを訪れるところからはじまる。

相変わらずの叙情的な書き出しが最高で、マヤコフスキーのタイムラインをたどるにつれて、新しい言葉の応酬に圧倒される。

ところどころに挿入される詩も良き。詩の段落の使い方とか、文字の配置はオリジナルに基づいてるのかしら。

マヤコフスキーのプレイボーイさが軽快なので、何人も出てくる女性の名前が混乱するけど。
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もちろん、初版。初版本オタクなので、極力初版の帯付きを手に入れたい。

発刊から20年ほど経ってるから、まさか未使用レベルのものが(お手頃価格で)見つかるなんて思わなかった。

神保町の古本屋さんでも、帯が無かったり汚れてるのに高いのしか見たことがなかった。

封筒あけたら、めちゃくちゃきれいな状態で驚いた。しかも注文カードがささってる。

当分の間、毎週月曜日のヨガもコロナで中止なので、通勤の荷物も少なめ。

という訳で重い本を持って歩けるから 、気合入れて読もうかなって。

ページを開いたら結構な文字の量で、読み切れるか自信なくなった。

(何度も言うけど)ドストエフスキーの翻訳で名を馳せた著者だけど、もともとはロシア文学→文化論からのフレーブニコフの研究からロシア文学ロシア・アヴァンギャルドスターリン時代の文化を研究って感じ。

だからこの本も文体が驚くほどみずみずしい。

20年以上前の本だけど、すべては今に繋がってる感じがする。

バフチンの「カーニバル性」のお話しも出てくるし。

わたし、今まで何をしてたんだろう、っていうくらい新しい発見がたくさん出てくる。

ロシア文学なんて(なんて、って言い方は失礼かもしれないけど)、日常生活に何か影響があるものではないけど、こうやって知識と教養を増やすことって本当に大事なんだなって思う日々。

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インターネットってすごいよね。

いつもお世話になってるHeritage Auctions さんのおすすめで、ロトチェンコが撮ったマヤコフスキー出てきたもんね。

fineart.ha.com

2017年に4,000USDで落札されたみたい。欲しい…裏にえんぴつで色々書いてある…。

 

マヤコフスキーが自殺したあとすぐに脳髄研究所が来て、遺体から脳髄を持ち出したっていうエピソードに引いた。

共産主義イデオロギーが「人類の進化の最高段階」であるというのを証明する”ためっていうのが余計に引いた。

そこには人の感情とか関係ないんだ、って。

レーニンゴーリキースターリンとかの脳髄が保管されてるらしい。(見たい)

あと、遺産の相続についても納得いかないとこがあるけど、ロシアおそロシアということなのかしら。

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出だしから文章も読みやすいから、イけそうな気がしたんだけど、文章量も多くてなかなか読み進められなかった。久々の研究書。

(後からよく考えたら、「ロリータ」もすごい文章量だったけど)

読み終わることなんて無いんじゃないかって絶望した。

それでも「なんだよ、女の子とよろしくやってる話ばっかりで、そんなに破滅感無いじゃん」て読み続けてたら、第5章から突然暗雲立ち込めて、あっという間に堕ちていく感じ。

マヤコフスキーの死からエピローグがこの本の本質なんだけど、そこを読むためにこの修行を耐えてきたのか。って思った。

あとがきにも「読者の忍耐力」って書いてあるけど、その通りだと思った。興味が無かったらまったく内容が頭に入ってこない本。

コロナウィルスのせいで週末おとなしくしてたおかげで、ラストスパートをかけられた。

だいたい行き帰りの電車でおよそ100ページほど読めるんだけど、この本は4ページくらいしか読めなかった。

気乗りしないっていうのもあったんだけど、登場人物のあだ名が出てきたりして、作中での統一がなされてなかったのがほんとにつらかった。

それを考えると、光文社古典新訳文庫の『カラマーゾフの兄弟』の名前の統一性はマジで革命だと思う。

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「暗殺か、自殺か」っていうのが、実は隠された大きな問題で、自殺をしたあたりから我々読者は「おや?これは謀殺されたのかな?」っていう疑問が自然に湧き上がってくる。

「おや、最愛の彼女と喧嘩してるのにレーニン全集届くなんてことある?」って思ってたら、やっぱりその人が怪しい流れになってて、ツラい思いして読んできたのはこのミステリーのためだったんじゃないかって思った。

自殺は自殺で美しいんだけど。

ナルシシズムの破綻と愛が足りなかったせいかもしれないけど、これは「もったいない死」。

 

読み切った後に「やったぜ!読み切った!誰かとこの興奮を分かち合いたい!」って思っても誰も居ないよね。

「#破滅のマヤコフスキー」で検索しても、この本を読んでる人はSNS上にもあまり居なかったよねー。

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あと、「すばる」の連載は読むべき。今月号はラストが最高ラブリー。

(最高すぎるので、ここでは紹介しないんだからね!)

来月号がたのしみだなー!

 

世界の終わりの夢をみる、偏愛記、賭博者、ロリータ。

オイディプス王ハムレットリア王

まだまだいける。まだまだ読みたい。