「トンネルを抜ければ、そこは雪国だった」
という名文があるように、帰国日の朝はまさにそれを体感した。
「ああ、あれはこういうことだったのか」と解った。
ニューヨークは700日ぶりの雪だそうで。
今回、2012年ぶりに12年ぶりにお仕事で行ってきました。
お仕事のことは会社が運営するYouTubeなどで見てもらえることができるので、”それ以外”のお話しをするよ。
記憶のアップデートをする1週間だった。
ニューヨークという場所はわたしにとってはとても大事な場所で、ティーンの多感な時期を過ごしまくった場所。
30代になってはじめて行くということに、感度が鈍っていたらどうしようと思って空港を出た。
空港から電車でダウンタウンの滞在場所まで向かいながら、エンパイヤステートビルやマンハッタンの街並みを横目に「帰ってきたんだな」って思えた。
渡航する前に、わたしのことを昔から知っていてくれるディーラーが、ふと「帰郷だね」って言ってくれたのを思い出した。
拠点にしたのはダウンタウンのリトルイタリー。
そこからコインショーの会場まで通勤した。
前職では海外出張の時に「通勤する」ということに上司(などが)微妙な反応だったので、いつも滞在先は勤務地のすぐそばだった。
これは良いこともあるんだけど、街を知らないままになってしまうことが多い。
今回は約30分の通勤だったけど、朝と夜で雰囲気が違う街並みとか、ミッドタウンとダウンタウンで確実に違う人間の雰囲気を肌で感じることができた。
地下鉄はコンタクトレスのクレジットカードや携帯電話をかざせばシームレスに乗れるようになってた。
コインショー初日、どうしても一目見たくてグランドセントラルの駅まで歩いた。
天井の星座はやっぱりそこにあって、階段の上にはApple Storeができてた。
別の日にアッパーウエストサイドに行って、ママが好きだったのはこういう雰囲気だったのかと理解した。
やっぱりわたしはミッドタウンとかダウンタウンが好きだけど。
日曜のセントパトリックチャーチのミサに出た。
人はまばらだったけど、祝福を受けることができて、なんか色々赦された気がした。
これがあるから、教会に行ってしまう。
赦して欲しいことも、ボスに対してムカついてたことも、赦さなきゃいけないことも神の祝福でどうでもよくなる。
見知らぬ隣の男の子とハグした時、日本は(なんでもいいけど)信仰が無いから、生きづらいなと思った。
ミュージカル「CHICAGO」に連れてってもらった。
昔から大好きで、オリジナルキャストの来日も見たけど、やっぱり現地で見るのは最高だった。
どうせ忙しくてミュージカルを1本も見ないで帰ってくるんだろうなーと思ってたから、夢が叶った感がすごかった。
古くからの劇場で、前から5番目の真ん中の列でしっかりとAll That Jazzしてきた。
いつも聞いたり見たりしていることが、目の前で起きていると思うと感情が大渋滞した。
また見に行きたいし、次はムーラン・ルージュとか、やっぱり艶やかなものが見たいのでがんばってお仕事して時間つくんなきゃ。
メトロポリタン美術館にはボスに一緒に行ってもらった。
展示してある大量のコインを愛でながら、時間が溶けていった。
幼い頃はわからなかったんだけど、時代とセクションごとにたくさんのハイグレードの状態の良いコインが展示されてた。
いつもはコイン単体を扱ってるからわからなかったけど、コインは人が生きてきた証なんだなって。
2階でモネを見た。モネは昔、ママから与えられた絵本に載っていて、わたしが一番最初に認識した芸術家。
日本の橋がかかるあの有名な絵を見た時、今わたしが見たかった絵はこれだったんだってわかった。
モネの絵の中で好きなのは「バニラスカイ」。お空が不思議な色で描かれている1枚。まだ実物を見たことがないけど、いつか見てみたい。
METにも淡い色で描かれた大聖堂の絵があるけど、あれも大好き。
時間とともに目がどんどん見えなくなっていくモネの筆使いが、良いよね。
アメリカンウィングのところにあるガラス張りの天井の下がカフェテリアになってるんだけど、そこでお肉のサンドを食べながら窓の外に広がる冬のニューヨークは、やっぱりすきだな。って思い出した。
あの、街全体が静かにラベンダー色のモヤと冷たい空気に覆われていて、セントラルパークの木々も葉を落としたその雰囲気がニューヨークの記憶なんだな、と思った。
カフェテリアのコーヒーのコンディメントには必ずアーモンドミルクがあるからありがたい。
アーモンドミルクが好きなんだけど、いかに「しょーもない1.5ドルくらいのどうでもいいアーモンドミルクが良いか」という話をボスにしてしまった。
今回、ナポレオン1世の肖像が印象的だった。
隣のお部屋のアーチから遠目に見た時に、あれが皇帝たる所以かと立ち尽くしてしまった。
METでは「ソクラテスの死」が一番好きだと”思ってた”んだけど、このナポレオン1世の大きな肖像を見た時、自分が新しい反応をしたのがわかった。
どこから見ても「権力者」の佇まいの大きな肖像画は、それだけで良かった。
モナコで再認識したアントニオカノーヴァの彫刻が本当に素晴らしかった。
巨石が好きなので、どうしても見ちゃう。このしなやかなラインが美しい。
もちろん、ウォーホルやポロックも見た。
結局タイムアウトだったので、また絶対行きたい。
最終日にはバスケなど。
ニュージャージーネッツはいつしかブルックリンネッツになっていて、昔働いていた銀座のショーパブのダンサーさんがネッツでチアをやっていたのを思い出した。
(香織さんお元気ですか。れーこは元気でやってます)
爆音で流れる音楽とお酒とエンタメを浴びて、めちゃくちゃ良い締めでした。
これはクセになっちゃう。もうバスケ見に行きたい。
バスケの帰り際に見えたブルックリンブリッジが最高だった。
また行くことがあったら、あの辺も行きたいなー。
もっと小慣れたいなー。
昨年、モナコから帰ってきてすぐ、「ニューヨークのコインショーに行くか」つってうちのボスがフライトをあっという間に予約した。
寒いニューヨークはヤだな、めんどくさいな。なんて思ってたことを反省してる。
良いコインと人にも出会えた。
何より、半日も絵を見るのに付き合ってくれるボスという、なかなか貴重な存在に感謝しかない。
最終日は朝のフライトで、Uberでニューアーク空港へ向かった。
前の日とは打って変わって、ダウンタウンは雪景色だった。
最初にニューヨークに来たのは2002年の1月末。一面は雪景色だった。
ママに手を引かれて街を歩いた記憶はあいまいだったけど、色々と思い出した。
寒いところが身体に合わないママが、「れーこと行った冬のニューヨークが忘れらない」っていつも言ってる。
わたしもだよ、ママ。
マンハッタンを出るためのトンネルを抜けたら、また違う雪景色が広がってた。
これがママが愛しているNYだったのかと、その感性を理解することができた。
寒くて仕方なかったけど、雪景色のニューヨークを見れたことがとても良かった。
ワインのマグナムボトルを買ってもらってご機嫌なわたし。
わたしにとってのSMはSakeとMusicなので。
なんかお酒っていうかワインを買うのが結構難しくって、「見つけたら買おう」という酒クズの我々なのでした。
ここ数年はヨーロッパの方とお仕事することが多くて、どこか自分のアメリカ性みたいなものを封じてきた。
ボスも「(れーこ)らしく居てくれていい」っていつも言ってくれるので、アメリカのギャルだったことを思い出して生きていこうと思った。
なんかいっぱいインプットできたから、当分たくさんアウトプットしていけそう。
今もそう。